かっぱ橋道具街

普通の良い会社になります。

中島康晴

「本来の中島さんは、多様性だとかチームの団結だとか、そういうものと一番遠く離れた人間じゃないですか。本来の性質と正反対のことをしようとしていると思います。歪んでいると思います。めちゃめちゃ変人でメンヘラだと思います。」

ざっくりの記憶だが、そのようなセリフを信頼する人間に言われた。飲み会で。あれから1ヶ月経ってもよく考えている。ショックとかでは全然ない。

彼は言葉選びが妙に上手だ。「変人」とか「歪み」とか、私はそう言われると喜ぶことを良く知っている気がする。

  • ホワイトな職場をつくろうとしている
  • 働きやすい環境をつくろうとしている
  • 親切な良い人であろうとしている
  • 自由で闊達なコミュニケーションがとれるチームを作ろうとしている
  • 「みんな仲良し」な関係を作ろうとしている

ざっくりと上記のようなことをやろうとしている私に対して、

「本当はそんな人間じゃないだろう。」と、彼は言ってるんだと思う。矛盾しているようにも見えるのかもしれない。

実際、私は他人の思いを軽視しがちな傲慢なところがあるし、無神経で不用意な発言で失敗したこともあった。そんなふうに自分のことを振り返ることもできる。

だけど一方で、メンバーと良い関係を築いて、良い制作を続けていきたい。普通に会社を良くしていきたいと考えている。

私がこんなことになった経緯

『「会社」っぽくしたくない。』というのが、10年前に私が作った会社のざっくりとしたコンセプトだった。絵を描いたり、アートを作ったりしていた私は、その作品つくりの延長線上に会社を捉えていた。

当時の私は国民年金の未払いもずいぶん放置していたフリーターで、その日暮らしだった。一度「レール」から降りると決めてしまうと、人間は社会的な価値観から解放されて気楽になるもんだなと、よく思っていた。「ちゃんとした常識人・大人」みたいなものに一生ならないために、独立した存在であるために、会社設立は、その手段になり得るかもしれないと、漠然とした期待と憧れがあった。意識の低いスタートだ。

当然、すぐに無理だとわかった。会社が存続するために、クライアントに対して責任を負うのは大変だった。社会的な責任を負わないといけない。

当初の憧れは心の奥底に残したまま、上部に忙しさが堆積し、そんな日々を楽しく幸せに作るために必要なことを考えて積み上げていった。

結果、私は「ちゃんとしてるっぽいことをやりたくない。」という、会社のメンバーからしたら、不思議なスタンスをうっすらと漂わせながら、「組織力を高めましょう。」「技術力を高めましょう。」とか、「より良い制作環境を作っていきましょう。」みたいなことを言う人間になったのだと思う。

  • 決まりっぽいものに抵抗がある
  • 「定例ミーティング」に抵抗がある
  • およそ会社っぽいものには抵抗がある
  • 「ゆるくやろうぜ」みたいな感じのものことが好き
  • そのくせ、いやに仕事に質にこだわろうとするところもある

そのあり方に、不可解な違和感を感じさせていたのかもしれないと思った。

うとねは変わっていくという覚悟が決まった。

10年経って、気がつくと、うとねは変わっていくという覚悟が決まっていた。長い時間、心の奥に沈殿していた思いを拾い上げて、そのドロドロを手で払ってみたら案外すーっと消えてしまった。

うとねで活躍してくれている優秀なメンバーたちのおかげだ。最近読んだ本でダメな社長のところにこそ優秀な人が集まってくれる話が書いてあったけど、こうして起こることなのかもしれない。贅沢だ。

10年間、積み重ねてきたことを、もっと高めて価値のあるものにしよう。この会社を素直に良くしようと思う。つまり、普通の会社になれば良いと考えれば良い。何も難しいことはない。私が今まで無意識にやろうとしていたことに比べたら簡単なことだ。

「覚悟」という言葉には実態がないと思っていた。だけど、もしかしたらこういう時に使うのが許される言葉なんじゃないかと考える。自分の力では、なかなか変えることができなかったもの、なぜだかわからないが大切だと思って執着していたことを、あっさりと振り払える瞬間が訪れるんだな。

1年くらいの時間をかけて、長いこと空間の中を対流していた違和感を特定してそれをあっさりと、溶かすように手放すことができた。それを「覚悟」と、初めて自分で呼んでみようかなと思う。

…しかし、本当にお粗末な話だったと思う。

でも、しょうがないよなぁ。恥ずかしながら、こんなものなんだから。

まだまだここから。がんばるわよ。
中島 康晴
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合同会社うとね代表の中島康晴の個人ブログ。仕事のことも仕事以外のこともアウトプットする場所です。デザイナー/フロントエンドエンジニア。3児の父。

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